とあるサイバー疫学者の備忘録
Cyberepidemiology(サイバー疫学)は、このサイトのために作った造語です。サイバーセキュリティ(Cybersecurity)と疫学(Epidemiology)を掛け合わせたもので、「サイバー攻撃の発生・拡散・防御を、感染症と同じ枠組みで捉える」という考え方を表しています。
疫学とは、集団の中で病気がどう発生し、どう広がり、どう防げるかを研究する学問です。宿主がいて、病原体がいて、感染経路があり、それを監視するサーベイランス体制があり、発生すればアウトブレイク対応が動く——この「感染の連鎖」の構造は、そのままサイバー攻撃にも当てはめることができます。

感染症の専門家が「どこで、誰から誰に、どうやって広がったか」を追跡するのと、まったく同じ手つきでサイバー攻撃も追跡できます。むしろこの視点が最も切実に必要とされているのが、病院そのものです。電子カルテが止まれば診療が止まり、患者の予後に直結します。ランサムウェアは単なる「システム障害」ではなく、臨床アウトカムに影響する事象として扱う必要があります。
疫学の言葉とサイバーセキュリティの言葉を、もう少し細かく対応させてみます。

このサイトを書いているのは、医学と疫学を学んだのち、ソフトウェアエンジニアリング、プロジェクトマネジメント、そしてセキュリティガバナンスへと進んできた人間です。診察室とサーバールーム、その両側に座ってきた経験から、この視点にたどり着きました。
ここでは、Cyberepidemiologyという枠組みを軸に、医療機関のサイバーセキュリティ、脆弱性を「有病率」として測る発想、インシデントを疫学的に分析する試みなど、セキュリティと医療が交差する領域について書いていきます。
